旅先の図書館で過ごす一日 “静かに地域を知る”旅の提案

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皆さんは最近、図書館を利用したことはあるでしょうか?
近年、「読書離れ」が叫ばれて久しく、電子書籍の普及もあり、「本を読む」機会は減っています。
文化庁が2023年度に実施した「国語に関する世論調査」によると、16歳から70歳以上までのすべての年代で、1か月に1冊も本を読まない人の割合が50%を超えています。

ましてや旅行で訪れた街の図書館に入るという経験をしたことがある人はさらに少ないでしょう。
旅行には観光のほか、出張や修学旅行(見学旅行)も含まれますが、いずれにしても旅行という限られた時間の中では必要に迫られない限り、図書館に行く機会はなかなかないと思います。

しかし、実は図書館はその地域の地域性や文化、風土、歴史を簡単に知ることができる、「地域の入り口」の一つなのです。

読書離れと図書館の現状

文部科学省が発表したデータによると、公立・私立など国内にある図書館の数は1999年以降、2021年まで一貫して増加し続けています。その一方、貸出冊数と登録者数は2010年をピークに減少しています。
また、来館者数は2013年度~2019年度までおおむね横ばいでしたが、2020年のコロナ禍を機に大きく減少しており、2022年度の段階ではコロナ改善の数には戻っていません。

一方でナイル株式会社が2024年に行ったアンケート調査によると、電子書籍の利用状況について「現在利用している」人は4割に迫り、特に20~30代の若い世代を中心に普及していることがわかります。
さらに「電子書籍と紙の書籍のどちらをよく利用するか」という問いでは、「全て電子書籍で読んでいる」と「紙の書籍より電子書籍をよく利用する」を合わせると6割を超えています。
こうした活字離れと電子書籍の普及は図書館離れにも影響していると考えられます。

しかし、筆者はせっかく数が増えている図書館を利用しないのはもったいないことだと考えています。
図書館は日常生活の中ではもちろん、旅行先でも活用できる優れた施設です。

筆者は学生時代、レポートや論文を書くためにフィールドワークを行っていました。その中で調査地となる地域の図書館を頻繁に利用していた経験があります。
また、社会人になってからは図書館に勤めていました。

こうした経験を活かして、今回はいつもの旅行とは一味違った「図書館を訪れる旅」を提案したいと思います。

絶対おすすめ!地域資料コーナー

なぜ、旅先で図書館に訪れるべきなのか。それはひとえに「地域資料コーナー」があるからです。自治体などが設置しているほとんどの図書館には、その地域に関する図書や資料を集めたコーナーがあります。
このコーナーが、旅行で訪れた地の知識を得るのに最適な場所なのです。
ここには図書館がある自治体や近隣の自治体の市町村史(誌)や広報誌をはじめ、住宅地図などの詳細な地図や地元企業の企業誌、ご当地出身の作家の著作、その地域にゆかりのある有名人や知識人に関する本などが並びます。
自分の趣味とマッチした「掘り出し物」に出会うこともあるかもしれません。

例えば市史には、その市の成り立ち、発展過程、場所によってはその後の衰退まで、正確に記述されています。それも人文(人の活動に関すること)関係だけでなく、気候や植生、場所によっては地質など自然に関することまで書かれています。
まさしく「地域の事典」とも言うべき本なのです。

しかし、こうした地域を扱った史料価値の高い本を手に取った経験がある人は、意外と少ないのではないでしょうか?
筆者が図書館に勤務していた図書館にも地域資料コーナーがありました。その地域で最大の都市でしたので規模もそれなりに大きく、地元の市史はもちろん、周辺自治体の町村史や先の例に挙げたような本のほか、周辺の各自治体が発行する文芸誌、地域に自生する植物のみを扱った植物事典など、興味深いものばかりでした。中には古い電話帳なんかもあり、現在の電話番号との桁の違いや字名の違いに驚いたこともありました。

学生時代、フィールドワークを行っていた筆者にとって、このコーナーは非常に助けられた記憶があります。
聞き取り調査などの合間に調査地の図書館に赴き、市町誌の目次を見て、自分の調査テーマに関連する部分を読み、報告書や論文の作成に活用できそうな部分をメモやコピーしたりしていました。
さすがに観光に訪れた場所でそこまですることはありませんが、少なくとも、調査・研究と趣味の点では非常に有益な時間を過ごすことができました。

ただ、もったいないことにこの地域資料コーナー、訪れる人がとても少ないのです。
図書館に勤務していた間、地域資料コーナーを訪れるのは、ほとんどが一握りの常連の来館者と空いている閲覧席を利用する人でした。

コーナー内の図書・資料は館外持ち出しや貸し出しが不可能なことから、一般的な来館者の目的にはそぐわないため、仕方のないことかもしれません。
加えて、現在では各図書館でもオンラインサービスが普及しており、例えばある程度の規模を持つ都市の図書館では、ホームページを利用して市史をネット上で読むこともできるようになっています。
地域資料コーナーが閑散としているのは無理もないことでしょう。

しかし、旅行で立ち寄るのに、貸出禁止は関係ありませんし、市町村市史以外の貴重な資料を目にするチャンスでもあるのです。

新聞コーナーも必見

地域資料コーナーとともに、旅行先の図書館でもう一つ見ておきたいのが「新聞コーナー」です。

こちらもほとんどの図書館にありますが、全国主要紙のほか、地方紙も閲覧できます。
むしろ地域によっては、主要紙よりも地方紙のほうが扱い大きい場所もあります。

地方紙も、大地域や都道府県単位で発行されるものから、さらに小地域である特定の地方単位で発行されるものまで様々です。小地域単位の新聞であればあるほど、記事に地域性が出ます。そうした地域性は記事だけでなく、天気予報の地域区分やテレビ・ラジオ欄の記載の仕方など多岐にわたります。
全国紙と比べてみるのも面白いでしょう。

図書館で旅行を一層有意義なものに

図書館は人々の生活や知識を豊かにする場ですが、それは旅行先でも変わりません。
出かけた先でも図書館を利用することは、その旅行をより有意義なものとするでしょう。

旅行先で「歴史民俗資料館」や「博物館」といった公共施設を訪れる人はそれなりにいるでしょう。これからはそうした施設と併せて図書館にも訪れてみてはどうでしょうか?

参考

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