地域イベントのUXデザイン ローカルフェスをバズらせる方法

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近年、全国各地でローカルフェスが盛んに行われるようになっています。
ローカルフェスとはその名の通り、「地方で行われるフェスティバル」です。大規模なものから比較的規模が小さいものまで様々あり、その分、個性豊かなものがたくさんあります。
その分、運営側からみると、オリジナリティを創出し、差別化を図ることが求められます。

一方で、観客の立場からみると、地方で開催されるローカルフェスについては、その規模や会場の様子、どんなアーティストが出演し、どんな人が参加しているのかなどよくわからない人も多いのではないでしょうか。

今回はローカルフェスとはどんなものなのか、成功の秘訣はなんなのか、見ていきたいと思います。

一般的な「フェス」といえば

日本のフェスといえば、1997年にスタートしたフジロックフェスティバルが草分け的な存在です。
その後もサマーソニックやロックインジャパンフェスティバルなど、有名なアーティストがたくさん出演し、膨大な集客力を誇る大規模な夏フェスが開催されるようになりました。また、フェスを開催する季節も問わなくなり、年末にはカウントダウンジャパン、5月の大型連休にはジャパンジャムなどのフェスが行われるようになっています。

こうした大規模なフェスの多くは集客を見込める大都市近隣で開催されることも特徴ですが、先述のフジロックフェスティバル(新潟県)やライジングサンロックフェスティバル(北海道)、ロッキンジャパンフェスティバルの一部日程(茨城県)など、地方で開催される大規模フェスも存在します。

こうしたフェスの様子はテレビの情報番組や音楽番組、インターネットのニュース記事で報じられることも多いことから、実際に参加したことはなくとも、その光景を目にしたことがある人は多いでしょう。

注目されるべき「ローカルフェス」

しかし最近、こうした大規模なフェスではなく、地方で開催される地域密着型のローカルフェスも多くみられるようになりました。
その中にはメジャーアーティストを複数ブッキングし、一定規模の集客を誇るフェスもありますが、多くはアマチュアミュージシャンや、その地域で活動する音楽家や団体が出演するものです。
しかしこうしたフェスが現在、まちづくりの観点から注目を集めています。

実際にどのようなフェスがあり、どうのように開催されているのでしょうか?

ローカルフェスの代表的な存在「1000人ROCK FES. GUNMA」

毎年5月末(もしくは6月初旬)に群馬県渋川市で行われる「1000人ROCK FES. GUNMA」というロックフェスがあります。このフェスは2017年から開催され、2025年には9回目を数えています。2020年には新型コロナウイルス流行の影響を受け、オンラインでの開催となりましたが、それでも130人が参加しています。

1000人ROCK FES. GUNMAも、例によって有名アーティストが出演するものではありません。演奏するのは全国から集まったアマチュアミュージシャンです。しかもその数1000人。この1000人が同時にその年の課題曲となった曲を演奏する、「参加型の超大型バンド演奏イベント」(1000人ROCK FES. GUNMAホームページより)なのです。

八木(2020)は、このフェスの開催について詳細に記述しています。
それによると2017年の第1回開催時には、参加者の募集は公式ホームページ上で行われ、ボーカル500人、ギター200人、ベース200人、ドラム100人の募集が行われました。楽器は各自持参する必要がありますが、参加料は1000円(当時)で、応募に必要な資格はありませんでした。最初はホームページやSNSを通じてイベントの告知を行いましたが、応募者数はあまり増えませんでした。
しかし、地元の新聞がイベントについて取り上げ、それがネットニュースに掲載されたことから、応募が急増したのです。

当初は、2017年の1回きりの開催予定でしたが、2回目の開催へ向けて署名活動が行われるなど、マスコミなどからの反響が大きく2回目以降も継続して開催されることとなりました。
まさしく大成功したローカルフェスの草分け的存在と言えるでしょう。

温泉とともに楽しむローカルフェス

石川県加賀市にある加賀温泉郷でも2012年から2019年までと、2023年に「加賀温泉郷フェス」が開催されています。
同フェスの会場となるのは、温泉街にある旅館やホテルの宴会場や会議場などです。出演アーティストは「万人受けするアーティストは参加していない(中略)サブカルチャー寄りのニッチなアーティスト」(八木,2020)ですが、Jポップやアイドル、ロックなど、ジャンル問わないことから、観客は多様な音楽に触れることができます。

温泉街が会場となるのでイベントの前後で温泉の入浴はもちろん、街の散策も楽しむことができます。
また、飲食スペースも設置されており、石川県の郷土料理に舌鼓を打つことも魅力です。

もともと加賀温泉郷は入込観光客数の減少が課題となっていました。その打開策として開催されたのが「加賀温泉郷フェス」です。
八木(2020)によれば、フェスが開催される際には多くの旅館が満室となったほか、20代を中心とした若い世代の観光客が訪れており、温泉街の再興に寄与するイベントであるといえるでしょう。

有名アーティストが出演するローカルフェスも

北海道苫小牧市で開催される「苫小牧ミライフェスト」は、2022年に始まった新興のローカルフェスですが、多くの有名アーティストが出演するほか、チケットがなくても入場できる無料エリアが設定され、そこでは飲食やダンスパフォーマンスを楽しむことができます。

またアニメソングに特化した「ナガノアニエラフェスタ」は長野県佐久市で開催されるアニソンフェスで、2019年から開催されています。会場内ではご当地グルメや信州の地ビール・地酒が販売されており、人気声優やアニソンアーティストのパフォーマンスとともに、こうしたグルメを味わうことができることが特長です。

訪れる観客の「体験」と重視するローカルフェス

有名アーティストが出演するローカルフェスでは地方に多くの観客が押し寄せ、莫大な経済効果を生み出します。

一方で、アマチュアミュージシャンやニッチなアーティストが出演するローカルフェスでは、有名アーティストが出演しないかわりに、食事環境や開催スタイルで差別化を試みています。
これはUX(ユーザーエクスペリエンス)を高めて集客を図るという取り組みにほかなりません。この部分を重視することが、フェスの特長を生み出し、成功、そして継続開催へとつながるのです。

こうした事例は「体験型ミュージックツーリズム」と呼ばれ、地方振興の起爆剤として期待されています。
SNS全盛の現代においては特に、SNSやデジタル技術を介し、広告としての活用はもちろん、自身が演奏した動画を用いてローカルフェスを盛り上げるような取り組みも可能でしょう。その場にいてもいなくても、ローカルフェスを盛り上げ、まちづくりに資することができるという時代がやってくるはずです。

運営側のアイデアや企画、そして熱意が、ローカルフェスを成功させ、地域を過熱させると考えられます。

参考

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