奥多摩って「東京」なの?境界線から見える都市と田舎のグラデーション

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突然ですが、都会と田舎の境界はどこにあるのか、考えたことはありますか?
都会は「人が多く集まる」、「住宅やビルが林立している」、「電車やバスがひっきりなしにやってくる」といったイメージを抱く人が多いでしょう。
逆に田舎のイメージは「山、もしくは畑や空き地が多い」、「家がまばら、もしくは民家がない」、「公共交通が不便」といった具合に、都会のそれとは好対照だといえます。
こうしたものは、地理学的には「地域イメージ」と呼ばれますが、「都会」と「田舎」の境目は、実際にはどこにあるのでしょうか?
具体的に見ていきたいと思います。

都会と田舎の風景の境界、北海道では

北海道を例に考えてみましょう。
飛行機で新千歳空港に降り立ち、JR千歳線の快速エアポートで道都・札幌へ向かいます。列車は千歳市、恵庭市、北広島市を抜け札幌市域へと入ります。
それぞれの都市は、札幌のベッドタウンとしての性格が強く、千歳駅や恵庭駅、北広島駅といった快速停車駅周辺はもちろん、恵み野駅や島松駅周辺でも、車窓からも住宅地や商業施設が見えます。しかし市境はといえば、千歳市~恵庭市の区間では短いながらも線路の両側が立ち並ぶ樹木に覆われますし、恵庭市~北広島市の境界では一面の田園風景が広がります。
さらに札幌市へ入る手前、北広島市内の車窓に現れるのは原生林です。原生林へと突入する手前には近代的なエスコンフィールド北海道があるものの、おおよそ180万都市の近隣を走っているとは思えない景色を目にすることができます。列車はこの原生林を抜けるとすぐに札幌市域へと入っていくのです。
列車はそこから15分も経たないうちに札幌駅へと至ります。

札幌市は大都市というイメージを持たれますが、市域の64%が森林です。
札幌市の資料によれば、「森林は、南西部に位置し、広い山岳地域である国有林と市街地の間に私有林が広がる」とともに、「都心部から近い位置に藻岩山や円山など天然記念物に指定された区域もあり、森林と都市が近接した状況」とされ、札幌市周辺では都会のすぐ近く、具体的には電車で15~20分くらいで自然がある、いわゆる「田舎」の風景がある、と言えるでしょう。

東京駅から電車で15分、見える景色は

しかし、東京で考えるとそうはいきません。
例えば、東京駅から東海道新幹線や東北・上越・北陸新幹線に乗って15~20分進んでも、新横浜や大宮までしか行けません。もちろん、沿線には延々とマンションなどを含む宅地や商業施設、工場など人の営みを感じる場所ばかりが続きます。

在来線でも同様で、中央線に乗っても15分程度で行き着く先は新宿や中野ですし、総武線に乗っても千葉駅に到達することすらできません。

この比較をするだけでも、東京一円の大都市の凄まじさを感じることができるでしょう。

東京駅を出発して最初に見える「田舎らしい」風景はどこ?

では東京駅起点で考えたとき、車窓からはじめて「田舎らしい」風景が見られるのはどの辺りなのでしょうか?
今回は宇都宮線・高崎線・常磐線・中央線という北や西に進む路線を見ていきます。

まず上野東京ラインに乗ってみましょう。
高崎線、宇都宮線、常磐線へと直通しますが、上野駅で常磐線が、荒川を渡り埼玉県へ入った先、大宮駅で高崎線と宇都宮線がそれぞれ分かれます。
3線とも関東平野を北の方へ向かって進むのは共通します。

高崎線と宇都宮線が線路を共有する大宮までは都市の風景が続きます。
分岐した先、高崎線で最初に田舎らしい田園風景が続くようになるのは鴻巣を過ぎた辺りでしょうか。東京駅から50kmを少し超えたくらいの距離で、大体1時間くらいの場所になります。

一方、宇都宮線は大宮の2つ先の駅、東大宮を出ると蓮田までの間で車窓にまとまった畑地が見られるようになります。
東京駅からの距離は35~40km、40分くらいの時間です。

上野で分岐した常磐線はどうでしょうか。
江戸川を渡り、千葉県へ入るとすぐ、車窓右手に小規模な畑地がありますが、左手には家々が建ち並んでいます。この区間では「田舎の風景」とは言えないでしょう。
その先も断続的に小規模な畑地や緑地が見られますが、田舎の景色とは言えない規模のものです。
本格的に田園風景が広がるようになるのは利根川を渡った先、茨城県に入り、多くの電車が折り返す取手駅を出た後でしょう。東京駅から、距離にすると45kmほど、時間でいえば50分ほど進んだ辺りになります。

中央線は東京都内を西へ進みます。上記3路線のように、比較的短い距離で隣接県に入ることはありません。
延々と都市の街並みが広がります。それは都心部はもちろん、荻窪~吉祥寺にかけてや武蔵境~武蔵小金井にかけての高架区間でもわかります。
最初に開けた景色が見られるのは豊田を出て左手、中央線の車両が数多く集まる車両基地を過ぎた先でしょう。豊田まで約43km、特快で45~50分、快速だと1時間以上かかります。しかし浅川を渡り八王子市へ入ると再び都会の風景が広がります。その街並みはほとんどの電車が折り返す高尾駅まで続き、車窓から家々が途切れるのはその先、相模湖までの間です。
しかし、高尾駅から先の区間は「田園風景」というよりも、山々がそびえる山間部の風景になります。
この辺り、北関東へ向かう3路線とは異なる趣です。
ちなみに東京駅から高尾駅までの距離は約53km、特快でも1時間以上かかります。都会の風景が続く時間・距離ともに、北関東へ向かう路線よりも長いといえるでしょう。

立川駅で中央線から分岐する青梅線はどうでしょうか。
青梅駅までは東京駅から直通電車が走りますが、こちらも沿線風景は中央線とさほど変わりません。
少なくとも、東京駅から1本で行くことのできる青梅駅までは都会の風景が続きます。
田舎の風景へと変わるのはその先、宮ノ平駅の辺りからです。
しかし、青梅線も中央線同様、平地に畑地が広がる田園風景というよりは、いきなり奥多摩の山々に向かっていくような、山岳路線のような景色へと変貌します。
東京駅から青梅駅までは距離にして約55km、1時間15分ほどかかります。

都市の景色と田舎の景色、境界を車窓から眺める

北関東へ向かう3路線は、距離間としては都心から比較的近いところに田園が広がる「田舎の風景」が見られることがわかりました。
一方、西へ向かう中央線系統では都会の風景が比較的長く続くだけでなく、都市の街並みが途切れるといきなり、山々が車窓に広がるという特徴があります。
特に、同じ東京の中でも奥多摩へ向かう青梅線は、長大トンネルで山間部を進む中央線と異なり、クネクネとした山道を進みます。車両は東京駅へと乗り入れるものと同じなので、車内はそのままに車窓のギャップを楽しめます。

都会と田舎の境界を意識しつつ、路線による車窓違いを楽しむ旅もいいのではないでしょうか。

参考

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